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Affinity
ある日、父がひとりの少女を連れてきた。名前はバルマウフラ。無表情で、何も喋らず、年齢よりもずっと大人びていた。メリアドールは気になった。どうして彼女は笑わないのか、どうして彼女は誰とも喋らず、誰とも混じろうとせず、いつも一人でいるのか。
だから、ある日、メリアドールは彼女に声を掛けた。
「お友達になりましょう?」
彼女は笑ってくれると思った。友達はたくさんいれば嬉しいはず。だって、私もそうだから。
「どうして…? あなたは、あのヴォルマルフの子供で、聖石を持ったゾディアックブレイブで、私と関係を築く利益は何もないはず」
「えっ、友達になるのに理由がいるの……?」
「……そうね、あなたがそう望むのなら、『お友達』になりましょう」
彼女はそっと微笑んだ。メリアドールが思っていたより、ずっとささやかな笑顔だったけれども。
それから、時々、バルマウフラはメリアドールのところへやってくるようになった。一緒に本を読んだり。魔法のことを教えてもらったり。厨房で一緒に料理を手伝ったり。薬草畑の手入れをしたり。
二人はたくさんのことを話した。そして笑った。でも、バルマウフラは決して自分のことを語ろうとしなかった。そして、バルマウフラは時々、ふらりと姿を消した。メリアドールが「どこに行っていたの?」と聞くと、彼女はただ「仕事」とだけ答えた。
メリアドールはバルマウフラの『仕事』のことを詳しく知らなかったけれど、彼女が自分に話しかけてくれて、一緒に過ごせることが幸せだった。
「私と『友達』になってくれてありがとう、メリアドール。私はずっと忌み子だった。誰も私に近寄ろうとしなかった。皆、私に恐怖と侮蔑の目を向けた。親愛な目で見てくれたのはあなただけだった」
私が笑えば、あなたも幸せそうに笑う。
あなたが笑えば、私も幸せ。
「――父の非礼を詫びる。ラムザ、信頼の証としてこの聖石を貴公に託す。私も貴公に同行したい」
幸せだった日々は長くは続かなかった。メリアドールは真実を知ってしまった。父・ヴォルマルフが多くの人を殺めていたことを――その中にバルマウフラの母親も含まれていたことを――知ってしまった。
もう自分は教会の人間としては生きられない。そうして、メリアドールは教会の不正に対抗するために活動を続けるラムザ一行と行動を共にすると決意した。
「メリアドールさん、本当にいいのですか? 僕とともに行くということは、あなたのかつての仲間と戦うことになる。それは――」
「仲間ではない。私は裏切られた。剣を向ける覚悟はできている」
その言葉に偽りはなかった。ただ一つ、心残りがあるとすれば――
――バルマウフラ、あなたはどうして私と『友達』になってくれたの?
――私の父があなたの母を殺したと知っていたのに、なのに、どうして私に笑いかけてくれたの?
――本当は、ヴォルマルフの娘である私のことなんか、憎くて、憎くて、殺したかったのではないの?
――あの笑顔は、一緒に過ごしたあの日々は、偽りのものだったの……?
「メリアドールさん、何か気がかりなことでも……?」
「いや、何でもない。ラムザよ、私は不正を働いた教会に正義の剣を振り下ろす。だが、一つ気がかりなことがあるとすれば……教会に『友』と呼び合う者がいた。だが、私が教会に裏切られたように、私もかの者に知らずのうちに裏切りをしていたことを知ったのだ。この動乱の中で消息は途絶えてしまったが……その者のために許しをこい願う時間をしばしもらいたい」
――親愛なる友よ、まだ友と呼んでくれるならば……汝の行く道に光あらんことを――