Happy White Day! 2018

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・FFBE2018年ホワイトデープレゼントはまさかのジークハルト!wどうしてww レイラスレーゲンをさしおいてジークハルト!!(二回目)
・きっとジークは黒フィーナちゃんにプレゼントしたかったんだろうなぁ…(黒フィーナちゃん全力で拒否してたけどw
・女子組(白黒フィーナ・サクラ・リド+リコちゃん)&ジークハルトでホワイトデーネタです。あと(出てこないけど)レイラスはゆるく腐ってる設定……


 

 
Happy White Day! 2018
 
 

「何、これ」

来客がある、とリドに言われて魔人フィーナが宿屋の扉をあけると、そこに金髪の青年が立っていた。魔人フィーナが口を開くより先に赤い薔薇を差し出された。ただし、漂ってくる香りは甘い。差し出されたのは薔薇の形を模したキャンディーだった。

「何、だと? ホワイトデーのお返しに決まっているだろう。この美しい私が贈るのにふさわしい高級品だ。さあ、受け取れ!」
意図が分からない、と魔人フィーナは男を睨みつけた。相手はかつて戦ったアルドールの英雄。

「私、あなたにバレンタインのチョコなんてあげてないんだけど」

「この俺からプレゼントを贈るというのに、何が不満なんだ」
「全部。しつこいわよ、ジークハルト! わざわざ宿まで押しかけてくるなんて鬱陶しい。ストーカーじゃないの」

昔から押しの強い男だった。いくら無視しても、知らん顔で魔人フィーナの後を追いかけてくる。そのしつこさは数百年経っても変わらない。

「なんじゃ……騒がしいと思ったら王土が来ておるでないか」
宿屋の入り口で魔人フィーナとジークハルトが言い合いをしていると、そこへひょっこりとサクラが姿を現した。ピンク色の髪をした少女はジークハルトの昔の戦友だった。

「おお、迅雷! ちょうど良いところに来たな。これをフィーナに渡しておいてくれ」

「いらないから!」

魔人フィーナがすかさず異議を申し立てたが、ジークハルトは気にするそぶりもなく、サクラに薔薇のキャンディーを押し付けて去っていった。

「むぅ……これはうまそうな飴玉ではないか……」

「ちょっと、サクラ! 勝手に受け取らないでよ」

「たまには良いではないか。あいつは昔からお前さんにぞっこんだったぞ。口を開けばフィーナ、フィーナとな。お前さんら、付きおうてたのか」
サクラは大好物の飴玉――薔薇のキャンディーに心を奪われて上の空だった。

「違うったら! あっちが勝手に押し掛けてきただけだから」

それ、私は絶対に受け取らないから、と魔人フィーナはそっぽを向いた。

「ねぇ、もう一人の私が楽しそうな話をしてるよ!」

「なになに、恋バナ? 私たちも混ぜて~」
わいわいとお喋りに熱中しながら、そこへやってきた年頃女子二人。リドとフィーナ――とフィーナの肩の上に乗っているもふもふの白い毛玉。

「クポポ~~リコも恋バナ大好きクポ!」

「ちょっとあんたたち……」

魔人フィーナは呆れ気味だった。また最初からあの男との関係を説明しなきゃいけないの? 面倒くさいから、もうどうでもいいわ。

魔人フィーナはすまし顔のまま無言でその場を離れた。

「なんじゃい、あいつは。しかし、それにしてもうまそうな飴玉じゃ。この形、この香り、最高の食材を使っておるな……むむ」

「サクラ、これは飴玉じゃなくてキャンディーっていうんだよ」

リドがすかさず突っ込んだ。

「これ、もう一人の私への贈り物? でもあっちの私、なんだかご機嫌ななめだったね」

「まあ、あいつも長いこと生きておるから色々あるんじゃろ」

「じゃあ私が貰っちゃおうかな。もう一人の私へのプレゼントなら私が食べてもいいよね。いっぱいあるからみんなで食べようよ!」
はんぶんこしようね、とフィーナは肩の上のもふもふを優しくなでた。「フィーナは優しいクポ~」

なんなのよ、と魔人フィーナは思った。

ジークハルトが押しつけたキャンディーを三人と一匹がおいしそうに食べている。ほほえましい光景ではある――贈り主が<あの男>でさえなければ。

「信じられない。私ったらおいしそうに食べちゃって……ふん、いいわよ。私はレインにお返ししてもらうから」

魔人フィーナは一月前のバレンタインを思い出した。700年生きてきてはじめて作った手作りチョコはもちろんレインにあげた。彼はどんなプレゼントをくれるのだろうか。

「レ・イ・ン」

別の部屋にいたレインを見つけると魔人フィーナはすっと身体をすり寄せた。

「お、色っぽい方のフィーナ、どうした?」

レインが首をかしげる。

「ねぇ、今日は何の日だか知ってる?」

さあ、なんだっけ、とレインが呟く。

「もう。にぶいのね。恋人に愛を返す日よ」

「ああ、ホワイトデー!」

レインが思い出したように声をあげる。「ラスウェルに返さなきゃ。バレンタインに手作りチョコもらってたんだよなあ。あ、フィーナと、色っぽいフィーナと、リドと、サクラと、えーと……あとリコからも」

「ああ、もう!」

魔人フィーナが立ち上がってレインから離れた。「なんでこんなに空気の読めない男ばっかりなのよ!」

 

 

2018.3.18

ヘスの戦士

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ヘスの戦士

 
陶器のように透き通る白い肌
腰で波打つハニーブロンドの巻き毛
深く濃いルビーの瞳
同じ色をした深紅の口紅
長く垂らした漆黒の花嫁のヴェール
純潔の白百合を髪飾り
身体に巻き付けた燃えさかる炎の蛇

彼女はヘスの戦士
彼女のふるう鞭の一撃の前にはどんな戦士であろうとひれ伏す
強さと、美しさと、気高さを兼ね備えた完璧な戦士だ

「アルドールの男が私に気安く話しかけないで。私はヘスの戦士よ」
魔人フィーナ
それが気高き戦士の名前だった
俺は彼女に夢中だった――一目で惚れたのだった
誰よりも強く、美しいヘスの戦士を振り向かせようと必死だった
だが、俺が何度口説こうと、彼女は振り向きもしなかった
氷のような微笑みが返ってくるだけだった

「どうしてヘスの側についたんだ」
「しつこい人。何故あなたに答えなければいけないの。私が何をしようとあなたには関係ないでしょ」
「フィーナ! 俺はおまえと一緒に戦いたかったんだ…!」
「ああ、そう」
つんとすました顔
まるで興味がないという素振りだ
「あなたは自分が私と一緒に戦えると思ってるの?」
「……どういう意味だ?」
「私は強くない人とは戦いたくないの」
「俺だってアルドールの戦士だ! おまえだって王土のヴェリアスの名前くらいは知っているだろう?」

俺は王土のヴェリアスとしてアルドールの皇帝の下で戦い、誰もが俺の強さを認めた
ただ一人、彼女を除いては……

「それで? 私、弱い人は嫌いだけど、剣を持つしか能のない無粋な人はもっと嫌いよ。あなた……私の隣に立つにはまだまだね」
彼女は鼻でふふんと笑った
「戦士は強く、美しく、しなやかでなくては……」
そう言いながら俺の前から颯爽と去っていった――一度も振り返らずに

追いかけなければ
彼女は遠くへ行ってしまう――俺の手の届かない場所へ

もっと強くならなければ
もっと美しくならなければ
そうしなければ、彼女に追いつけない

そしていつの日か、彼女の隣に立って、二人で世界を見るのだ

あれから百年……二百年……七百年……
俺は一度も妥協しなかった
どこまでも力を求め、美を追求し続けた――全ては彼女にふさわしい戦士になるために

「見ろ、俺は誰よりも美しくなった。俺の美しさは世界が認める。だが――」

フィーナ
俺はおまえに認めてもらいたかったのだ

「――相変わらず、おまえは返事もしてくれないのだな……」
氷のように冷たいヘスの戦士
彼女は今や氷よりも冷たくなった――クリスタルへとその身を変えたのだ

「フィーナ……答えてくれ。俺はまだおまえの隣に立てないのか?」
土の神殿――しんとした静寂の時間
「ふっ、それがおまえの返答か。いいだろう。いつかおまえを振り向かせてみる。おまえの言った通り俺は執念深い男だ。七百年も待った。これからも待ち続ける――だから帰ってきてくれ。その時までに、俺はおまえにふさわしい男になっているからな……」

いつか、その日まで――

 

 

2017.10.07

  

・ジークハルトが超越したナルシストなのは、魔人フィーナに憧れてて追いつきたい一心で……とかだったらいいなと思いまして書きました。
・この二人は当初、戦士×戦士な王土×魔人コンビを想像してましたが、2章の展開を見ているとフィーナ×ジークハルトでは?!と思うように(笑